小惑星リュウグウが宇宙と実験室で違って見えるのはなぜ?

産業技術総合研究所(産総研)とその他の研究機関は、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取した試料のデータと、探査機がリュウグウの表面を上空から観測したデータを直接比較しました。その結果、水の有無を示すヒドロキシ基(-OH)による吸収に明らかな違いが見られました。この違いの原因を調査するために、リュウグウに似た含水ケイ酸塩に富む始原的な隕石の実験とデータ解析を行ったところ、リュウグウの表面が宇宙線や宇宙塵にさらされて変質(宇宙風化)し、水が部分的に失われていることが明らかになりました。この研究成果は、探査機からの遠隔観測と採取試料分析を組み合わせて初めて明らかにできたものであり、惑星探査におけるサンプルリターンの重要性を示す画期的な成果となりました。

リュウグウは、太陽系ができた当時の情報を保持していると考えられる始原的な小天体で、その試料を調べることで地球や生命の起源に迫ることが期待されています。「はやぶさ2」は、2回のタッチダウンを行い、約5.4gのリュウグウ粒子を採取しました。その後、リュウグウ粒子の一部が6つの初期分析チームに分配され、複数の研究機関で種々の分析が行われました。

本研究では、リュウグウ粒子の反射スペクトル測定と、「はやぶさ2」がリュウグウの赤道付近を上空から観測して取得した反射スペクトルを直接比較しました。その結果、リュウグウ粒子の反射スペクトルと観測データは一致していましたが、OH吸収には2倍以上の深さの違いが見られました。この違いの原因は、リュウグウが宇宙風化作用を受けて、表面で結晶レベルの脱水が進んでいたことであると解釈されました。

Source: PR TIMES