ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の発表によると、ESAの惑星防衛ミッション「ヘラ」には、28の中小企業が参加している。ヘラミッションには全体で約100社が関わっているが、そのうちの中小企業は宇宙機や観測機器、CubeSatなどの開発に欧州の最先端技術を提供している。
ヘラミッションは2019年のESA閣僚理事会で支持された。プロジェクトでは、中小企業の参加を重視し、技術革新と欧州の人材育成に貢献している。14か国の中小企業が参加し、ヘラの総予算の15%を占める。
ヘラは、NASAとの国際的な二機体による小惑星観測ミッションの欧州側の貢献である。2022年にNASAのDARTがディモルフォス小惑星に衝突してクレーターを作る実験の後、ヘラがそのクレーターを近距離で観測する。これにより、惑星防衛のための運動量移動衝突技術の有効性がより理解できるようになる。
ヘラの開発、製造、試験期間は短く、わずか3年で2024年10月の打ち上げを目指している。設計では最新の商用オフザシェルフ技術を最大限に活用し、並行的な作業フローを実施している。
中小企業はニッチ技術と革新性を提供している。ヘラは小惑星の視覚に基づく近接ナビゲーションや制御、深宇宙でのCubeSat利用、衛星間通信、高精度な惑星間ラジオ測距・航法技術など、将来の惑星間ミッションに向けた新技術を示す。
ESA加盟14か国の中小企業がヘラに参加している。ヘラの初期定義段階と並行して、ESAの一般支援技術プログラム(GSTP)のもとで技術開発を行った中小企業のいくつかが、OHBやESAとの契約を結んでいる。
ヘラで最も目立つ中小企業の関与は、2機のCubeSatの開発である。Juventas CubeSatはESAがルクセンブルクとデンマークのGomSpaceが主導し、ROB(ベルギー)、Emxys(スペイン)、GMV(ルーマニア)、Astronika(ポーランド)、Emtronix(ルクセンブルク)、IPAG(フランス)、Tekever Space(ポルトガル)が参加。Milani CubeSatはイタリアのTyvak Internationalが管理し、VTT(フィンランド)、PoliMI、PoliTO、INAF、INFN(イタリア)、Tekever Spaceが参加する。
これら2つのCubeSatはディモルフォス小惑星に関する追加データを収集する。Milaniには鉱物探査のための分光画像センサーと塵分析装置が搭載され、Juventasは小惑星の地下レーダー探査を行い、表面重力を計測する。
ISISpaceはヘラにCubeSatの深宇宙展開器のペアを初めて搭載し、2年の旅の間CubeSatへの電力供給と通信を行い、小惑星周辺での精密な分離を支援する。Tekever Spaceは、Proba-3ミッションでの開発を発展させ、ヘラとCubeSat間の衛星間リンクシステムをさらに調整した。
ESAとの協業は、中小企業の事業拡大、技術力向上、商業能力拡大、ネットワーク拡大、宇宙ビジネス参入に役立っている。中小企業はESAに新しい革新的技術と敏捷な作業手法をもたらす。ヘラミッションの中小企業は、欧州宇宙産業の競争力を全体として強化する存在と言える。