アメリカ航空宇宙局(NASA)の発表によると、微小重力環境下では、地球の重力の継続的な負荷がないため、骨組織が再構築される。骨細胞はその振る舞いを調整し、新しい骨を作る細胞の活動が低下する一方、古い骨組織を分解する細胞の活動は通常のペースを保つため、分解のペースが骨形成を上回り、骨は脆弱になる。宇宙滞在1ヶ月ごとに、対策を取らない限り宇宙飛行士の体重支持骨は約1%骨密度が低下する。また、地球上では単純な動きで活性化される筋肉も、宇宙ではそれほど働く必要がないために衰える。この骨量と筋力の喪失は筋骨量減少症と呼ばれる。

筋骨量減少症は宇宙飛行士の健康に深刻な影響を及ぼす。地球上でも、加齢、運動不足、疾患などにより筋骨量減少が起こり、転倒による怪我、骨粗鬆症など、重大な健康被害をもたらす。

研究者は筋骨量減少の大まかな原因は理解しているものの、微小重力誘発性の筋骨量減少の基本的メカニズムと影響要因の解明が続けられている。宇宙飛行中と地球帰還後の宇宙飛行士の健康維持のため、食事、運動、薬物の最適な組み合わせを特定する研究が多く行われている。

宇宙ステーションの各宇宙飛行士は、地球上と同様の運動プログラムを用いて、筋骨格系を構成する筋肉、骨、その他の結合組織を活性化している。クルーは1日平均2時間運動している。宇宙飛行士は長年、固定自転車に乗ったり、トレッドミルでランニングをしたりしてきた。初期のミッションでは、宇宙飛行士を機械に固定するハーネスを用いた重力の力を模したトレッドミルが使われた。しかし、これらの機器は長期宇宙飛行には大きすぎる。最小限の装置または装置なしでも適度な運動ができるかどうかを調べる研究が行われている。

筋骨量減少症の治療法の研究は、地球上の骨粗鬆症に関する研究と重なる部分がある。ミオスタチン阻害薬などの骨喪失防止薬は、宇宙飛行士と動物モデルの両方で筋骨喪失を防ぐ可能性がある。組織チップは、特定の組織や臓器の複雑な機能を模倣した小さなデバイスである。筋骨量減少の予防と治療法の理解は、月や火星へのミッションに特に重要である。長期の無重力環境の後、宇宙飛行士は部分重力環境で過酷な活動を行う必要があるかもしれない。NASAは、月や火星探査のために宇宙飛行士を最適に準備し、宇宙機関の探査目標を達成するため、このようなデータが必要である。

Source: https://www.nasa.gov/missions/station/iss-research/counteracting-bone-and-muscle-loss-in-microgravity/