アメリカ航空宇宙局(NASA)が1月16日に発表したプレスリリースによると、同局のIXPE(イクスペ、撮像X線偏光観測衛星)が、ブラックホール周辺の極端な環境での粒子加速の過程に関する新たな手がかりを提供した。

IXPEは昨年4-5月、「マイクロクエーサー」と呼ばれる天体を観測した。マイクロクエーサーは、ブラックホールが伴星から物質を奪い取っている系で、今回の対象はいて座にある超新星残骸W50の中心にあるSS 433だ。SS 433の強力なジェットは、W50の形状を歪め「マナティ星雲」の異名を取ったが、光速の26%、秒速48,000マイル以上の速度で噴出していることが判明している。

IXPEの3つの望遠鏡は、X線の偏光特性を測定し、ブラックホール周辺など宇宙の極限環境での物理過程を解明する手掛かりを提供する。今回の観測では、SS 433の東側ローブで、磁場中を旋回するエネルギー粒子によるシンクロトロン放射が検出された。

NASAマーシャル宇宙飛行センターのフィリップ・カレット主任研究員によると、「IXPEのデータは、加速領域近くの磁場がジェットの動く方向を指していることを示している」という。これは予想外の発見だったとのことだ。

ジェットと星間ガスの相互作用により磁場は乱されると考えられていたが、ジェット内の磁場が星間ガスとの衝突で「固定」され、その結果、粒子加速領域での磁場の整列性が高まった可能性がある。

IXPEの観測結果は、ブラックホールジェットから超新星残骸のアウトフローに至るまで、様々な天体からの放出物における磁場整列の共通メカニズムの解明に役立つと期待されている。

Source: https://www.nasa.gov/missions/ixpe/nasas-ixpe-helps-researchers-maximize-microquasar-findings/